訪問診療の「お盆・夏の多忙期」を乗り切る
——看取りとオンコールが重なる夏に、院長とチームが倒れない備え5つ
「お盆はスタッフも休ませたい。でも、看取りも急変も、なぜか重なるんですよね」 「連携先が軒並みお休みで、結局オンコールを全部自分が背負うことになる」
——夏の繁忙期を前に、訪問診療クリニックを経営する院長先生から、こうした声をよく耳にします。
訪問診療クリニックを経営する院長先生へ。お盆や夏の連休は、在宅医療にとって、一年でもっとも綱渡りになりやすい時期です。暑さで患者さんの状態は不安定になり、看取りも増える。それなのに、薬局も、訪問看護も、後方支援の病院も休みに入り、頼れる先が一気に細くなります。しかもスタッフだって帰省したい。そのしわ寄せが、最後にはすべて院長一人に集まってくる——。
今日お伝えしたいのは、この夏の綱渡りを「気合い」で乗り切るのではなく、備えと仕組みで乗り切る、という話です。
\在宅医療と経営に関する情報を発信しています/
登録していただけると在宅医療経営に関する最新情報を受け取ることができます。
なぜ、お盆・夏は過酷になるのか
夏の繁忙期がつらいのは、いくつもの負荷が同じ時期に重なるからです。
まず、暑さそのものが患者さんの状態を揺らします。脱水や食欲低下、持病の悪化が起こりやすく、終末期の方は看取りのタイミングとも重なりがちです。次に、地域の連携先が一斉に手薄になります。薬局の在庫補充、訪問看護の緊急訪問、病院の受け入れ——ふだん当たり前に頼れていた支えが、お盆には細ります。そこにスタッフの帰省が加わり、対応できる人員も減る。
つまり、需要が増えるのに、供給が減る。この構造を分かったうえで先に手を打つかどうかで、夏の消耗はまるで違ってきます。
夏の綱渡りを、備えと仕組みで乗り切る5つの実践
1. 「誰が・いつ休むか」を、早めに決めて共有する
お盆のシフトを直前に組もうとすると、必ず穴が空きます。当院では、遅くとも一か月前には、スタッフの休みとオンコール担当を決めて、全員が見える形にしています。早く決めるほど、スタッフは安心して帰省の予定を立てられ、院長も「誰が動けるか」を前提に計画できます。休みの調整は、繁忙期対策の一番の土台です。
2. 連携先の「お盆の体制」を、事前に確認しておく
いざ急変というときに「薬局が休みだった」「連携病院が受けられなかった」では、患者さんも家族も不安に陥ります。当院では、お盆前に、薬局・訪問看護・後方支援病院の休診日と連絡先を一覧にして共有しています。どこがいつ動けるかを先に把握しておくだけで、いざというときの判断が速くなります。連携は、平時よりむしろ有事の前にこそ確認するものです。
3. 急変・看取りが起きそうな患者さんを、事前にリストアップする
繁忙期に慌てないために、当院では夏に入る前、「この方はお盆に状態が変わるかもしれない」という患者さんを、チームで洗い出しておきます。あわせて、ご家族とはあらかじめ看取りの方針を確認し、夜間に想定される変化への対応(予測される指示)を、担当が代わっても分かるよう記録に残します。備えのある患者さんが増えるほど、突然の呼び出しは減っていきます。
4. 院長一人に集中させない——「一次対応」を仕組みで分散する
夏の消耗の最大の原因は、すべての電話が院長に集まることです。当院では、夜間の一次対応を看護師と分担し、「まず看護師が受け、医師の判断が必要なものだけ院長に上げる」という流れを決めています。院長がすべてを抱え込む体制は、繁忙期に必ず破綻します。判断の線引きを事前に共有し、右腕に一次対応を任せられる形をつくっておくことが、院長自身を守ります。
5. スタッフと院長自身の休みを、「先に」確保する
繁忙期こそ、休みは後回しにされます。けれど、夏を乗り切った先には秋があり、また看取りの季節が続きます。ここで無理をして誰かが倒れれば、クリニックそのものが揺らぎます。だからこそ、当院では院長自身の休みも含めて、休養を「予定として先に入れる」ようにしています。空いたら休むのではなく、休むと決めてから埋める。この順番が、燃え尽きを防ぎます。
まとめ——夏を乗り切る力は、7月のうちに仕込んでおく
お盆や夏の連休は、放っておけば院長とチームをすり減らす、危うい季節です。けれど、需要が増えて供給が減るという構造が分かっていれば、先に手は打てます。休みの調整、連携先の確認、患者さんの備え、一次対応の分散、そして自分自身の休養——これらはどれも、暑さが本格化する前の今だからこそ間に合う準備です。
戦わない在宅医療とは、競合と戦わないだけでなく、季節の過酷さとも根性で戦わない、ということでもあります。仕組みで受け止められるものは、仕組みで受け止める。それが、院長もスタッフも倒れずに、患者さんの夏を支え続けるための、静かな備えになります。
まだ間に合います。今週のうちに、この夏の「夏支度」を、チームで一度話し合ってみてください。
在宅医療を提供する医療機関・クリニックの院長・経営者さま向けに
「業績悪化のときの対策チェックリスト21」を無料でお配りしています。
このチェックリストを見ると
・新患が止まった…どうすればいい?
・訪問件数は伸びているのに、収益は増えない…なぜ?
・業績悪化した時、まず見るべきはどこ?
といったとき、即戦力になってくれることでしょう。






夏はお盆休みで地域の連携先が一気に手薄になる一方で、暑さによる脱水や急変のリスクが高まるという「需要増・供給減」の構造、まさにその通りですね。特に「お盆に状態が変わりそうな患者さんを事前にチームで洗い出し、予測される指示を記録に残しておく」という仕組みは、現場の慌てふためきを劇的に減らすと感じます。担当が変わっても戸惑わずに動ける先回りの備えは、患者家族の安心はもちろん、オンコールを背負うスタッフの精神的な負担を軽くしますね。