サービス担当者会議に、どう出るか
——15分の同席を「連携が回る場」に変える5つの準備
「担当者会議に呼ばれても、時間が合わなくて出られないんです」「出ても座っているだけで、何を話せばいいのか分からなくて」——訪問診療クリニックを経営する院長先生から、こうした声をよく耳にします。
サービス担当者会議は、ケアマネジャーが主催する介護保険の場です。医療者にとっては、どこか自分の主戦場ではないような感覚があるかもしれません。ですが、この会議で決まったことが、その後の在宅生活の枠組みになります。入浴をどうするか、外出をどこまで認めるか、緊急時に誰へ連絡するか。医師の意見が入らないまま決まってしまうと、後から現場で齟齬が起きます。
以前、退院前カンファレンスを紹介につなげる場に変える方法をお伝えしました。今日はその居宅版です。忙しい訪問の合間に、この会議とどう付き合うか。出られないときにどうするかも含めて、5つに整理してお伝えします。すべてに顔を出して疲弊するのではなく、出方を設計して要点だけ渡す。それが、戦わない在宅医療の考え方です。
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医師が出ない会議で、何が起きているか
サービス担当者会議は、居宅介護支援の運営基準に位置づけられた手続きです。ケアプランを新しく作るとき、認定の更新や区分変更があったとき、そして利用者の状態が大きく変わったときに開かれます。つまり、生活の設計図を書き換える場面には、必ずこの会議があります。
ここに医師がいないと、何が起きるか。
まず、判断の空白ができます。「熱が出やすいので入浴は控えたほうがいいのでは」「でも清潔が保てない」——医学的な線引きが必要な話が、参加者の推測で埋められていきます。安全側に倒れれば生活が縮み、逆に倒れれば事故が起きます。どちらも、一言あれば防げたことです。
次に、情報がこちらに戻ってこなくなります。会議は多職種が集まる貴重な場ですが、そこに参加していない人には、決まったことしか伝わりません。誰がどんな懸念を持っていたか、家族がどこで迷っていたか。そうした過程は、後から記録を読んでも分かりません。
そして、これは言いにくいことですが、印象が残ります。以前、病院の連携室が在宅医の何を見ているかをお伝えしましたが、ケアマネジャーも同じように見ています。「あの先生は呼んでも来ない」という評価は、次の紹介の判断に静かに影響します。
とはいえ、訪問の合間にすべての会議へ出るのは、現実的ではありません。だからこそ、出方を工夫する必要があります。
会議を「回る場」に変える5つの準備
1. 「出られない前提」から、出る方法を組み立てる
予定が合わないのは、こちらの都合を後から合わせようとするからです。順番を逆にします。
・その患者さんの訪問予定日を先に伝え、その直後の時間に会議を設定してもらう
・移動中や訪問先から、オンラインや電話で数分だけ参加する
・全体には出ず、医師が必要な議題のときだけ呼んでもらう
・看護師が代理で出席し、医師の意見は書面で添える
当院では、ケアマネジャーに「この患者さんは毎月第二週の火曜午後に訪問しています」と、あらかじめ伝えるようにしています。日程を組む側からすれば、こちらの空いている時間が分かるだけで、格段に調整しやすくなります。呼ばれてから断るより、先に枠を渡しておくほうが、お互いに楽です。
オンラインでの参加も、以前に比べて受け入れられやすくなりました。実施方法については、ケアマネジャー側の運用や最新の通知に沿う必要がありますので、可能な形を一度相談しておくとよいと思います。
2. 出られないときこそ、「照会」を白紙で返さない
やむを得ない理由で参加できない場合、ケアマネジャーは文書等で意見を求めるかたちを取ります。ここが分かれ道です。
「特にありません」と返す医師は、少なくありません。ですが、これは会議に出ないことよりも、はるかに大きな損失です。せっかく意見を聞かれているのに、判断材料を渡していないことになります。
当院では、返す内容を型にしています。
・現在の病状と、今後半年ほどの見通し
・生活のなかで、してよいことと避けたいこと
・急変が起きるとしたら、どういう形か。そのときの連絡の順番
・こちらから相談したいこと(家族の疲れ、服薬の管理など)
この四つを、それぞれ二、三行で書きます。全部で十行ほどです。これがあると、会議の場で「先生からはこう来ています」と読み上げてもらえます。出席していなくても、議論に加われるということです。
3. 医師が話すべきは、診断名ではなく「予後と、してよいこと」
会議で医療者が病状を説明すると、場が静かになることがあります。専門的な話が続くと、他の職種は口を挟めなくなるからです。
他職種が本当に知りたいのは、診断名や検査値ではありません。この方はあとどれくらいの見通しなのか。何ができて、何が危ないのか。この二つです。
たとえば「心不全の増悪リスクがあります」ではなく、「入浴は湯温をぬるめにして、長湯を避ければ大丈夫です。ただし急に体重が二キロ増えたら、その日のうちに連絡をください」。こう言い換えると、その場にいる全員が動けるようになります。以前お伝えした家族と観察の目安を共有する話と同じで、相手が使える言葉に翻訳することが仕事です。
4. 「決めてほしいこと」を、一つ持っていく
会議が報告会で終わってしまうことがあります。各職種が近況を述べ、なんとなく終わる。これを避けるには、こちらから議題を一つ持ち込むことです。
入浴の可否をこの場で決めたい。緊急時の第一報を誰にするか決めたい。夜間の見守りをどう分担するか相談したい。何でも構いませんが、「今日ここで決まるとありがたいこと」を一つ用意しておきます。
これがあると、会議に締まりが出ます。そしてケアマネジャーからすれば、議題を持ってきてくれる医師は非常に助かる存在です。会議を回す責任を、一人で背負わなくてよくなるからです。
5. 会議のあとの、30秒をつくる
最後に、これが最も効きます。会議が終わって解散するとき、ケアマネジャーと二人になる30秒を意識してつくります。
全体の場では言いにくいことが、必ずあります。家族の関係に懸念がある、経済的に厳しそうだ、本人の希望と家族の希望がずれている。こうした話は、参加者全員がいる前ではしにくい。
当院では、帰り際に「あと、少しだけいいですか」と声をかけるようにしています。ここで交わす短い会話が、次に何か起きたときの連絡ルートになります。会議そのものより、この30秒のほうが後で効いてくることも珍しくありません。
当院が経験したこと
以前、ある担当者会議で、当院は病状を丁寧に説明しました。心不全の経過、薬の調整、今後注意すべき点。時間をかけて話し、伝わったつもりでいました。
ところが後日、ヘルパーの方から訪問看護師にこう伝わってきました。「先生のお話が難しくて、結局お風呂に入れていいのかどうか分からなかったんです」。それで、入浴の介助を控えておられたとのことでした。
説明の量は十分でしたが、相手が必要としている形になっていませんでした。ヘルパーの方が知りたかったのは病態の理解ではなく、明日の訪問で湯船に入れてよいかどうか、という一点だったのです。
それ以来、当院では会議で話す内容を、生活動作の言葉に置き換えるようにしています。「入っていいです。ただし五分まで、湯温はぬるめで、上がったあと十分は横になってもらってください」。この形にしてから、会議のあとに「分かりました」という反応が明らかに増えました。
専門的に正しいことを話すのと、相手が動ける情報を渡すのは、別のことでした。
まとめ——全部に出るのではなく、要点を渡す
サービス担当者会議に、毎回顔を出せる在宅医はほとんどいません。それを前提にしたうえで、どう関わるかを決めておくことが大事です。
訪問の直後に日程を寄せてもらう、出られないときは照会を型で返す、予後としてよいことを生活の言葉で伝える、決めてほしいことを一つ持っていく、そして終わりの30秒をつくる——この5つで、参加の回数を増やさなくても、連携の質は変わります。
この会議は、医師にとっては数ある業務の一つかもしれません。ですが、ケアマネジャーにとっては、その方の生活を組み立て直す大切な場です。そこに短くても確かな一言を置いていく人が、地域から信頼されていきます。まずは次に届いた照会に、「特にありません」ではなく十行を返すところから始めてみてください。それだけで、相手の受け取り方は変わります。
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・業績悪化した時、まず見るべきはどこ?
といったとき、即戦力になってくれることでしょう。






専門的な病状説明に終始するのではなく、「入浴の可否や時間」「急変時の連絡目安」など相手が実際に動ける生活動作の言葉に置き換えて伝える大切さにすごく納得しました。医学的な正しさだけでなく「何ができて何が危ないのか」を明確に共有してもらえると、現場の介護スタッフも迷わず安心してケアに入れますね。